第31章 依頼3
「何してたの?」
「ちょっとだけ仕事の残りを、」
リネルは話題をそらすべく、先程パリストンに渡されたファイルを取り出した。
腕組みをしながら扉の前に立つイルミへ駆け寄り、伺う声をかけた。
「ちょうど良かった。イルミに仕事の依頼をしたいんだけど……」
「いいよ。」
イルミは渡されたファイルへ目を伏せる。ぱらりとそれを確認した後、不思議そうに首を傾げた。
「この手の仕事は実行よりも状況やスペックの調査が8割でそれが手間だと思うけど。これだけ情報揃ってるなら自分達で殺れば早いのに」
「忙しいの色々と。それに私、家賃収入とダブルライセンス取得のおかげで今わりとお金に余裕あるしね」
「ふうん」
「イルミと結婚したおかげだね」
柄にもなく、えへへと嬉しそうな笑みを見せてみた。イルミは少しだけ眉を上げている。
「おだててるつもり?依頼料は負けないよ」
「……わかってるよ。今はお金あるから大丈夫だって」
“イルミに釘を刺されずとも、クロロからの臨時収入も入る予定であるし”
脳内でそう反論した。
リネルの次はイルミの番だ。イルミはリネルの前に一通の白い封筒を差し出してきた。
「リネル、週末は仕事休みだって言ってたよね?」
「うん」
「リネルにひとつ頼みたい仕事があるんだよね」
「え……」
イルミからの仕事の依頼は出会って以来初めてであり、リネルは驚いた顔をした。
渡されるそれは招待状のようだった。上質紙の縁には金色の装飾がなされている。真ん中に、洒落た字体で記される文字をリネルは小声で口にした。