第31章 依頼3
「知りたいのか?そいつの居場所」
「は、はいっ!」
「おススメはしないぞ。色々変な噂もあるヤツだ」
「私が直接どうこうではなく、その」
「…まあいい。結婚祝いだ、ヒントだけやる。金好きで派手好きなヤツだ。用心深くてネット情報はことごとく隠蔽してるとか。後は自分で探せ」
リネルは大きく瞬きをした。そのヒントは有難いが核心まではまだまだ遠いとも言える。少しだけ口を尖らせた。
「…もう、結婚祝いなら全部教えてくれたっていいのに」
「オメーな、ちょっと可愛いと思って何でも思い通りになると思ってんじゃねーよ」
「別にそんなこと微塵も思ってません!」
「テメーもハンターだろが。顔じゃなくてココを使えよ」
トントン親指で指す先が頭ではなく心臓なあたり、ジンらしい。
そんな頃、パリストンがいつもの笑顔で顔を出した。
「いやージンさんお久しぶりです!遅くなって申し訳ない」
「あんま見たくなかったけどな。オメーの顔」
「また釣れない事を仰る。あ、そうそうリネルさん、これ 急ぎでお願い出来ますか?」
パリストンはリネルに一揃いのファイルを手渡した。
リネルはジンに会釈をし、部屋を出た。
パリストンがこのタイミングで急な仕事を渡すとは即ち、この場にいてもらっては困ると言う意味だ。
言われずとも、あの二人がこれからどんな腹の探り合いをするかなんて 恐ろしくてその場にいたくもない。
手渡されたファイルをぱらりとめくる。仕事内容を理解し、リネルは独り言のように口にした。
「殺し……暗殺の仕事」
今となっては依頼の手間もかなり省けるので助かる。この件はイルミに投げてしまおうと考えた。
◆
帰宅後すぐ、リネルはジンから得た情報に引っかかる何かがないかを検索すべく パソコンを立ち上げた。
OSが起動するまでの時間すら惜しいくらいだ。
食い入るように画面を見つめブラウザの検索バーに思い当たるワードを打ち込んでいると、急に後ろから声をかけられる。
「リネル ちょっといい?」
「イルミ?!おかえり……」
まだまだ詰めが甘いようだ、集中していたためイルミの気配に気付かなかった。
驚きを隠し普段通りの顔を作り、手元のパソコンを自然に閉じた。イルミは閉じられたリネルのパソコンに目線を投げてくる。