第30章 依頼2
クロロが リネルでないと、と言った意味をここで正式に理解した。
ハンター達にすら現存は公開されていない情報、当然誰でもアクセス出来るわけではなく 仕事柄こういった情報管理もしているリネルだからこそといえばそう言えた。
幻影旅団が次に狙うものがそれかと思えば、自分は直接関与する訳ではないが 情報提供をする事で一旦を担っているような感覚にもなり、久しぶりに心躍る高揚感を覚えた。
しかし、今のリネルには無用の感情だ。
小さく息をつき その場でクロロに要点のみをまとめたメールを作成する。当然のように請求書も添付し 暗号化を掛けたメールを送信した。
ここでふと、ヒソカの話を思い出した。
まだきちんと見ていなかったメモをバッグから取り出してみる。
「J L A……?……“真夏の黒い影”……どういう意味?」
何度か眺めてみるが、地名ともニックネームの頭文字とも何とも言えない文字が並んでいるだけだ。謎の煽り文も意味がよく分からなかった。
ヒソカが目をつけているのだからそれなりの念の使い手なのであろうか。ハンターに絡む人間であれば広く浅い情報は持っているが 思い当たる節はなかった。リネルは頭を悩ませた。
そのままの文字を検索にかけてみても当然これと言った結果はなかった。思いあたるハンター向けのブログやSNS情報等を全て検索してみるも、ヒットの気配すらなかった。
しばらくは粘ってはみたものの、糸口すらわからぬ事に半ば諦めの溜息をついた。何時間やった所で この方法では拉致があかないだろう。
「あー わかんないなあ。こっちはちょっと時間かかるかもしれない……」
大きく伸びをした後、匙を投げるようにノートパソコンをぱたんと閉じた。本日は既に一仕事終えているし、このまま血眼になり情報漁りをする元気もなかった。
リネルはテーブルの隅に置いてある昨日の本の続きを読み始めた。