第30章 依頼2
帰宅後、風呂上がりに濡れ髪を拭きながらリネルは自身のパソコンを開いた。メールボックスには新着メールがある。送り主は先程の電話の主だった。
「ふーん……クロロって動物も好きだったっけ?……」
内容を一旦走り読みすれば用件は見えてくる。
クロロが今回欲する物は絶滅種である魔獣の剥製だそうだ。
それをどこかの財閥が秘密裏に所持しているという所までは掴んだが、それが世界中に数ある財閥のうちのどこなのか 情報が割り出せないとの件だった。
まず、何かを調べる際の基本はハンターサイトである。これはシャルナークも実施済みではあろうが 一応調べてみた。その他 思い付く限りの動物愛護団体や違法でのやり取りがなされる闇サイトなどもあってみるが それらしいヒットはゼロだった。
リネルはしばし首を傾げて考えた。クロロの言った “リネルでなければ” の意味はなんだったのか。
「……わかった、過去情報……!?」
ピンと、そう思い付いた。
独り言のよう呟いた後、リネルは一般ハンターには公開されていない管理者サイドから閲覧出来るページを頭に思い浮かべた。
ここにあるのは 重要度の高い情報というよりは、いわゆる「お蔵入り」と言える中身の物が多かった。ごく一部の人間にしかニーズはないであろうマニアックなネタが詰まっているのだ。
だがリネルとて、勝手に情報を漁ってはログを追われて用途を言及される恐れがある。ログインパスワードを打ち込む手が、ピタリと止まった。
「ここならあるかもだけど。……こんな時 持つべきものは優秀な義弟だよね〜」
リネルはふふんとそう言い、再度メールボックスへ戻った。
最近ミルキと話した折に仕入れた 複数回線を仮想化する暗号化コードを使ってみる。情報をもらう為にそれなりの金額を支払ったが その分も上乗せしてクロロに請求すればいい。
リネルは無事にサイトへのアクセスを果たした。
「……やったビンゴ!……有名だよね、クリスフォードって」
クリスフォードと言えば由緒血筋を重んじる筋金入りの名門貴族だ。縦組織を重んじるが故に黒い噂もちらほら出ていた過去がある。リネルもその名前だけなら何度も聞いたことがあった。