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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第29章 依頼


翌日の夕刻、リネルは郊外の小さな街で一件の仕事を終えた。

「どうもありがとうございました!」

「いえ。では私はこれで」

少し前にハンター協会を騒がせたキメラアントの生き残りが 人間に害を与えているとの報告を受け、その討伐を担当した。
敵は階級にしたら対した事もなく、戦闘にはなったものの大きな怪我もなく無事に仕事を終えた。服についた砂埃をぽんぽん叩き 夕暮れの街を後にした。



「やぁ、こんな所で会うなんて偶然だね」

「……ヒソカ」

帰路途中でかけられた声の方へ顔を向ける。そこには相変わらず、読めぬオーラを纏わせるヒソカがいた。

「私は仕事だったの。ヒソカは?」

「たまたま近くにいてね。いいオーラを感じて来たらキミがいただけさ」

「ふうん……」

偶然、なのは本当のようだった。リネルは瞳を細めてギラギラするヒソカを見つめた。
この辺りで衝動的に「狩り」でもしていたのか、服や顔に飛んだ返り血が嫌でも目についた。
ヒソカは大きく口元を曲げて リネルに向かい低い声を出す。

「なんだか……雰囲気変わったね」

「気のせいじゃない?」

ヒソカの言葉は図星で、ぐさりと頭に刺さった。

リネルはぷいと目線をそらした。それはリネルにとって、今一番言われたくない言葉な訳で まるでそれを知っていて指摘をされた気分だった。

「お茶でもどう?ちょうどキミに依頼したいコトがあったんだ」

「いいけど。そんな格好でお店入れるの?」

「ノープロブレム」

ヒソカはするんと指先を滑らせる。ドッキリテクスチャーを使いあっさり汚れを隠し去ってしまった。
柔軟性のあるセンスは流石はヒソカと言った所か。目の前で芸術がかるスマートなオーラを見せられては つい感嘆の声が出る。

「わぁ、……すごい ファンタスティック」

「光栄だよ」

そのまま、近場の喫茶店を目指した。


コーヒーを注文し窓際の席に着いた。ヒソカはわざとらしい程すました雰囲気を作るリネルに、いきなり追い打ちをかけてくる。

「まるで抜け殻だ」

「え?」

「雰囲気が変わったって言うか……普通になったよね。もちろん悪い方の意味で」

「……」

「ちょっと前のキミはもっとこう、危うさと新鮮さがあって魅力的だったけどな」

「……」

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