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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第28章 3ヶ月後


本が好きなのは実際本心で、それにはクロロの影響が強かった。
クロロの読んだ本を真似るように重ねて読んでいた時期を頭の中で懐かしく思い出しながら 目線を文字に滑らせていると、イルミの声がそれをぷつんと遮ってくる。

「なに読んでるの?」

リネルは顔を上げる。肩越しに振り返り、イルミに満面の笑みを見せた。

「家に寄り付かない旦那の嫁が歳上の愛人と不倫しちゃって妊娠までしちゃって、2人で旦那の暗殺計画を立てるハラハラどろどろサスペンス」

「何が言いたいの?」

けろんと答えるイルミの反応を鼻で笑い、再び本へ向かった。
たまたま読んでいた小説がそういった内容だったのは事実だが これがなかなか面白かった。

「…………」

今日のように久しぶりに会う時は同室で寝たりする事もある。
それを提案するかのごとく、リネルは再びイルミに顔を向ける。
少しだけ甘えるよう ゆっくり声を出した。

「……今日さ」

「なに?」

「イルミのところで寝てもいい?」

「うん。別にいいけど」

了承するとイルミは一旦自室へ戻ってゆく。

切りの良い所までを読み終えた後、リネルは手元の本を閉じた。壁面扉を使い イルミの部屋へ向かって行った。



「リネル」

「ん〜」

「何しに来たの?」

「本を読みに」

リネルの興味の矛先はずっと先程の書籍のままだ。
イルミの部屋のベッドはリネルの物よりもスプリングが固めで うつ伏せ状態になっても本を読むには沈まずに適している。
ここにいるのはそのためだと言わんばかりにリネルの冴える両眼は文字ばかりに集中していた。

しばらくはそれを横から見ていたイルミだが、いよいよ痺れを切らしたようだ。リネルの手元にある本を素早く取り上げてくる。

「ちょ、……返して!」

「本はいつでも読めるけどオレは明日からまた仕事。意味わかる?」

許可なく中断を強いられればちくりと苛立ちを感じる。本を取り返そうと手を伸ばせば、イルミは一瞬でそれを高くに持ち上げてしまう。

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