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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第28章 3ヶ月後


あれから、3ヶ月余りが過ぎた。

一時は引越しやら新婚旅行やらでリネルの生活は大きく変化したが、ひと段落すれば 後はその暮らしに慣れていくだけとなる。
今ではすっかりゾルディック家を中心とした仕事との2軸の日常に慣れ込んでいた。

一方のイルミとは 良くて1日置き、長ければ数週間顔を合わせない日すらあった。

結婚前後は2人でやるべきことも多く 時間も多く共有したおかげもあり、イルミ相手に恋愛感情に似た感覚を抱いた事は確かな事実ではあった。

しかし今の慣れてきた生活の中では、とにかく互いのスケジュールが合わないのである。

規則時間で動く訳ではない暗殺業というのは やたら偏りが大きすぎて、ゾルディック家の敷く予定がリネルには計り知れなかった。

幸いにもこれは打算要素の強い結婚であり、互いに邪魔せずという約束の元に結ばれた婚姻が故に 変に寂しさや煩わしさを感じる事も少なかった。

たまにしか会わないからこそ、なるべく喧嘩をせぬよう努力も出来るし リネルとしてはこれくらいの距離感がちょうどいいとも言える。

そんな折、実に二週間近くぶりになるだろうか。
隣室にイルミの気配を感じることとなる。



ノックの音と共にイルミがひょっこり顔を出す。リネルは手元の本から目線を離さぬまま、抑揚なく声をかけた。

「……おかえりー」

「ただいま」

「……久しぶりだねー」

「何してるの?」

「……見てわかんない?本読んでるの」

一瞬だけ、イルミに視線を投げてからリネルは再び文字に目を落とす。立てた両膝の上に乗る本を押さえて軽くソファに座り直した。

「リネル、本なんか読むんだ」

「……ん、結構好きだよ本は」

ゼノ経由で、この家に書庫が備わっている事を知ったのは比較的最近だった。自由に読んで構わないと言われてからは 面白そうな本を見繕っては 時折読書に時間を使っていた。

書庫は古い貴重な本から割と新しい新書までラインナップが幅広かった。しいて指摘をするならばジャンルのほぼ全てが暗殺に絡む物ばかり、という点だろうか。
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