第27章 帰還
2人がようやくゾルディック家に帰宅した頃には、日をまたぎ深夜0時を過ぎていた。
リネルは暗い屋敷の廊下を進みながら、イルミに小声で話し掛けた。
「こんな時間だしお土産渡したりとか報告は明日でいいよね?」
「報告は必ず1番に。ウチではそういうルール」
「え?……でも こんな時間なのに?」
「この時間なら親父は寝たりしてないよ」
ならいつ寝ているのか、との疑問を持ったが聞かずにおいた。そもそも失礼にはならないのかとの疑問を抱きつつと そのままシルバの部屋を訪れることとなった。
部屋をノックし中に入れば イルミの言った通り、普段と変わらず威厳ある態度のシルバが2人を迎えた。
「無事に終わったようだな。ご苦労だった」
「ホントに。色々難儀したよ」
「日常にはない良い経験にはなっただろう」
いつになく柔らかい口調でいうシルバの声を受け、イルミは小さな溜息をつく。
「オレはこれから仕事だっていうのに」
「ああ 知っている。だが、それとこれとは別物だろう?」
「まあね」
この慣れない旅行の後に仕事が控えていたとは思いもよらず、リネルは少し眉を詰めた。
イルミ本人はさも当然といった態度で 簡単にその場をおさめてしまう。
「少しだけ寝てから行こうかな、もういい?」
「ああ。ご苦労」
イルミは一人であっさりとシルバの部屋を去ってしまう。
急に2人きりになる。シルバはリネルに伺うよう、話し掛けた。
「どうだった?今回の旅は」
どうもこうも、不慣れな旅が故に苦労の連続だったように思う。
リネルは視線をずらし 小声で言った。
「……本音を言ってもいいですか?」
「構わない。」
リネルはここぞとばかりに口にした。
「……疲れました、すっごく。彼とは育った環境も違うし考え方や価値観や、多々噛み合わない事も多し……」
「今後様々訪れるであろう夫婦の苦難はおそらくこんな比ではないぞ?いい予行練習と思えばいい」
「イルミは何を考えてるかよくわからない時が多いですし」
「それについてはオレもわからん時がある」
「……なら私が気に病む必要はないでしょうか。まだ新婚の私がきちんと全て彼のこと理解しようなんておこがましいと言うか」