第26章 結婚挙式
受付にて担当女性に事の事情を説明してみれば、雨が降り出しそうな天候もあり 幸い今なら待ち時間なしで対応可能だとか。
手続きを済ませると早速支度の時間になる。
2人は一旦別部屋に通された。
黒いスーツ姿の女性スタッフに案内され、ウエディングドレスやベールがきちんと並ぶ部屋に来た。
側面には四方を囲う鏡がある。奥の方には様々な花をあしらった数種類のブーケが展示されていた。
猫脚のキラキラしたドレッサーの前には 生花の髪飾りやティアラが並んでいる。包まれるような優しい香りは、花や化粧道具のものだろうか。
「うわぁ……」
つい感嘆の声が出てしまった。こんな場所に縁の無かったリネルにすればそこは夢の中みたいで、急に童話世界のお姫様にでもなった気持ちになる。まさかこんな場所で、こんな形で、想像すらしなかった結婚式をすることになるとは。
気恥かしさやら嬉しさやら ふわふわ舞い上がる緊張感の中で、何度もまばたきをした。
「まずはドレスから選びましょうか」
「は、はい」
優しい笑顔のスタッフが、ドレスへと誘導してくれた。
「すごい……色々ある……」
「はい。土地柄上 エンパイアラインに髪型はダウンスタイルと花冠を合わせてリゾートらしい雰囲気にされる方も多いですが。既に披露宴を終えていらっしゃるなら前回と違うラインにしたり 新郎様のお好みにされたり、との方も多い印象です」
「……迷っちゃいますね……」
「マーメイドラインも海辺をバックにするととても綺麗ですし、プリンセスラインもご新婦様の雰囲気なら似合いそうですね!」
専門用語が多過ぎて、半分くらいは流し聞き状態だったが。
わかるのは 眩い白さのドレス達はどれも凛と美しく己の価値に誇りを持ち 真っ直ぐに主張をしてるところだ。リネルは2、3歩みを進め、ふと目に留まったドレスを見つめた。
「こちらは老舗ドレスメーカーが手掛ける一点物でございます。ビスチェタイプなので野外の教会でも映えると思いますよ。サイズがやや小さめなのですが、ご新婦様なら問題なさそうですね」
「……決めました。コレにします」
働いた直感はきっと悪くない。
リネルは笑顔でスタッフに答えた。