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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第24章 新婚旅行1日目


「ちょっ…………返して!!」

「心の準備って。こんなモノ持ってきておいて何言ってるの?」

「ち、違うの!!たまたま入れっぱなしになってただけで!朝急に家出たしバタバタしてたし!」

顔がかあと熱を持つ。
早口で事の成り行きを全力でイルミに説明したが イルミは表情を変えぬまま、しどろもどろになるリネルを冷ややかに見下すだけだった。


「たったよ。1分」

「え?!」

イルミは易々と箱を開けてしまう。
左から順番に、中のものをわざとらしく並べ出してしまった。

「………………」

「色々あるね。どれからいこうか」

「ヤダどれも」

もちろん即答だった。
ローター、バイブ、手錠、アイマスク、その他もはやリネルには固有名詞がわからないものまで点々と。
どれも何となく見たことはあれど 詳しく知る訳もなく、その生々しさには思い切り怪訝な顔をするしかなかった。

イルミが最後に取り出すのは、どう見ても人工的発色の謎の液体が詰まった小瓶だった。イルミはそれを目の前に近付け、しげしげとラベルを見つめている。黒目だけを回し こちらに視線を投げてくる。

「心の準備なんかしてないでこれ飲んだら?」

「絶っ対やだ」

怪しい予感しかないではないか。
イルミは躊躇なく小瓶の蓋を開けてしまう、瓶の口へ鼻先を近づけていた。

その瓶の中身は何なのか、なんとなくわかる気はするのだが。リネルは恐る恐る声を出した。

「……どんな感じ?」

「やたら甘い匂いがする」



イルミはどこまで本気なのか、躊躇なく瓶に口をつけてしまう。

中身をほんのひと口だけ口内に含むと、リネルへ素早く手を伸ばす。首の後ろに回された掌に引き寄せられた。

「……っ……」

イルミとの夜の展開は何度か経験はある。だがいきなり唇を重ねられることは想定外で、不覚にもぴくんと背筋が反った。

押し当てられるように触れた口唇からは じわりと舌が入り込んでくる。柔らかい感触とぬるい温度は一気にリネルの感覚を犯してしまう。一緒に漏れてくるどろどろに甘い液体は、舌に触れると発火したような熱を持つ。
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