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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第24章 新婚旅行1日目


そんな険悪なる2人を嘲笑うよう、隣には腕を組みながらイチャつくカップルが通り過ぎた。

元来、ここはそういう土地だ、なのにこちらの温度差はなんなのか。リネルはありありと溜息を吐き 仕切り直すよう口にした。

「とりあえずどっかでご飯食べてホテルで休もう」

「人混みとか不味い店は勘弁してよ」

「ならイルミが決めてよ」

「じゃああそこにしようか」

視線の先には空港に載せられている堂々と巨大な広告がある。
現地の魚介類を取り扱う“いかにも”な雰囲気の店だ。一緒に美味しいものでも食べればこの空気感も少しは軽減するだろうかとの期待も無くはないのだが。リネルは半ば諦めを込めて言った。

「あのカンジだと予約必須だね。この時間からじゃ厳しいかもしれないよ」

「なんとかしてよリネル。ハンターライセンスは使えないの?」

「これだけメジャーな地域だし使えるはず。てかイルミも持ってるよね、言った以上は自分で何とかして」

「リネルがやってよ。ハンターなんだから十八番だろ」

「……ハンター協会ではライセンス所持者を広義の意味合いで“ハンターを名乗る資格所持者”と定義付けています。よってイルミも広義の意味ではハンターです。」

「いいからやってよ」

イルミは堂々としたまま一切の悪気なく言い放つ。
超がつく敏腕暗殺者の彼が 公共の場においてはここまで頼りにならないとは想定外だった。リネルは顔を引きつらせた。

「二度とイルミとは旅行したくないや」

「気が合うね。同感」


結局、諸手配は全てリネルの仕事となる。
先程の店舗に向かえば想像通り、人の数はそれなりに多く 着飾った男女がペアになり華やかに食卓を飾っていた。
ハンターライセンスを使えば 席を用意してもらうなど朝飯前だ。担保に借りたイルミのライセンスも併せて提示し、待ち時間なしでの入店を果たした。

店の雰囲気も料理の味も なかなかだった。
しかし いきなりハンターライセンスを二枚も持ち合わせる男女のペアはただ者ではないだろうと ちらちらこちらを警戒する店員の様には始終落ち着けぬままだった。
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