第24章 新婚旅行1日目
「ねぇ……今回の旅のミッションが出されてる……」
「なにそれ」
「お土産が指定されてる……」
「取り寄せればいいよね」
「日時入りのレシート持ち帰れって書いてある……」
「そんなのいくらでも捏造出来るよ」
「現地の観光名所で写メ撮って送れってのもある……」
「ミルキに依頼しようか。画像合成させればいいかな」
「……そこまで行きたくないの?!」
よもや旅の相棒である本人を前にして、失礼千万だ。
口を尖らせるリネルに向かい イルミはしらりと返事を返した。
「リネルが余計なこと言わなければこんな事しなくて済んだのに」
「またそれ?!だから私はホントのこと言っただけだし」
話題を引きずるイルミはまたもふいと、顔を外に向けた。
不似合いな旅行に戸惑いながら辿々しく目的地までやって来た。
無事に現地の空港に着いた頃には、既に日が落ちかけた夕刻となっていた。
空港を出れば そこにあるのは一面の海辺だ。
白い砂浜は広い。波打ち際に寄せられるさざ波は潮の香りを飛ばしてくれる。
真っ赤な夕陽が水面に写り、ゆらゆらと揺れていた。遠くに数羽飛ぶ海鳥のシルエットがいい塩梅にアクセントとなっている。
周りには高層と言える建物が並び、近代的な雰囲気も放っている。
浜辺にはまだ人も多く賑わっているが さすがは有名な観光スポット、情景は申し分のない美しさだった。
見ていると疲れが癒される気もしたが、はしゃぐ元気まではなかった。リネルは携帯を見てから ぽつんとイルミに言った。
「20時過ぎ……もうこんな時間だしお土産とかは明日でいいよね。……とりあえず今日は休みたい……」
「もうちょっと早く来れたら全部終わらせてすぐ帰れたのに」
「は?」
「リネルの段取りが悪いから」
ツンと顔をそらすイルミの仕草はどこか昨晩のカルトに似ていた。リネルはずっと喉元に止めて置いた言葉を一気に口にする。
「……言っておくけど時間調べるのも乗り継ぎ調べるのも駅の改札口探すのも全て全部私が1人でやったんだけど!ちょっとは協力しようとか労おうとかそういうのないの?!」
「元々リネルの蒔いた種なんだから。オレとしては迷惑料を請求したいくらいだよ」
「親睦が深まるどころか広がってるよこれじゃ!」
「残念だったね」