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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第23章 出発準備


これは予想外だった。カルトの曖昧な言葉の真意はリネルを心配してくれていたとなれば えらい可愛い所もあるではないか。

リネルはカルトの前にしゃがみ込んだ。

「そんなわけない!自惚れるな!ボクは少しもお前を認めたわけじゃない」

「そっか、そうだよね わかってる。…………ちゃんと認めてもらえるように頑張らなきゃね」

「努力した所でたかが知れてるけどね」

カルトはむすんと顔をそらす。
素直じゃない物言いが急に嬉しくも思える。その後カルトは一度も目を合わせないままに、リネルの部屋を後にした。

家族として、心配してくれていたのかも。先程のシルバの言う意味が少しわかるような気がした。


その後、ふらふらの脚でベッドに潜り込んだ。
うとうとしだした矢先に またも人の気配が近付く。リネルはゆっくり目を開いた。

「…………イルミ」

わざとらしく目を擦って見せ、重そうに身体を起こした。微かに感じるイルミのオーラは上機嫌とは言えそうもなかった。

「酒くさい。」

「昨日飲みに行ってたから」

「誰と?」

「職場の人と」

「リネルって仕事忙しそうにしてるけど実際は暇なの?」

「…………」

先程のシルバやカルトとの一件で、次に会った時はイルミに対して少しはしおらしい態度でも取ろうかと思っていたのに。詮索や嫌味を含む言い方は実に感に触る。リネルは思い切り反抗するきつい目で、下からイルミを睨んだ。

「逐一報告の義務でもあるの?この家は夜遊び禁止?」

質問への返答はなかった。
イルミは何かを探るよう、まばたきもなくリネルを凝視する。

「リネル」

「なによ」

「オレに何か隠してない?」

「は?別に何も」

「早めに吐いた方が身の為だよ」

「……だから何もないってば」

予感はあったが。さすがにイルミを簡単には丸め込めないみたいだ、すでに何か勘付かれている様子。
とは言え、オンナたるもの隠し事の1つや2つ当たり前 心底愛する相手でもないのだから自身の全てを開示する気なんか甚だあるわけもない。仏頂面のまま淡々と返事を返し、わざとらしい欠伸をして見せた。

そして半分とぼけた声で、話題を横にずらした。


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