第3章 決断
「リネルさん ちょっといいですかー?」
ハンター試験も無事に終わり数日が経った頃、パリストンがリネルに声をかけてくる。パリストンは立場的にはリネルの上司にあたるのだ。
こういった声がかかると、その内容のほとんどが手間のかかる雑用や事務処理ばかり。リネルは溜息をつき、パリストンのデスクへ向かった。
「なんでしょう」
「仕事としての社会貢献をお願いしたくて。この人間の『処理』をして頂けますか?」
にっこり笑顔を見せるパリストンは リネルにファイリングされた資料を手渡す。
仕事内容は明確だった。処理というのはつまりは抹殺、ハンター協会にとって悪疫な人物の完全消去である。
思いの外、早くに舞い込んできた暗殺の依頼だった。
「何やらかしたんですか?この人」
「新ハンター十か条の4条を著しく冒したのでね、処理することに決まったんですよ」
「納期は?」
「上もうるさくて…7日以内にお願いします。潜伏場所もある程度特定出来ているのでそんなに大変じゃないと思いますよ」
「そうですか 承知しました」
「よろしくお願いします。リネルさんみたいな有能な部下を持って僕はほんとに果報者ですよ」
この手のおだても既に聞き飽きている。状況は変わらないにしろ、リネルとしては嫌味の一つでも言わないと気が済まない。
「試験が終わったばかりで雑務もめちゃくちゃに多いんですけどね。詳しくご存知だと思いますが」
「ええ もちろん!それを加味してもリネルさんは優秀だと言っているんですよ」
「あなたが処理すれば1日で終わるのでは?」
「僕はほら、戦闘向きじゃないですからねー」
パリストンはわざとらしい笑顔でそう言ってのける。リネルは再度溜息をつき、仕方なしの返事を返した。
「わかりました。納期までには対応します」
「しっかり頼みますよ!では僕は十二支んとの会議の時間なので失礼しますね」
リネルは 尖る靴の音を鳴らし去って行くパリストンの背中を見ながら、3度目の溜息をついた。