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イチバンノタカラモノ。

第1章 デアイ、ハジマリ。


まぁ、特に友人になったわけでもなし、不思議な男に出会ったな、という事で楓も缶をゴミ箱に捨てると、歩き始めた。
すると、ポケットの携帯電話が震えた。出ると、若い男の声だ。
「便利屋か?」
「はい、そうです。依頼ですか?」
普段はぶっきらぼうな話し方の楓もTPOは弁えている。仕事の時にはきちんとした敬語に直るのだ。
男は、切羽詰まったように、声を潜めて話し始めた。
「殺してもらいたい奴がいる」
「殺しは、相当な額の報酬を頂く事になりますが」
「あぁ、問題ない」
「標的の名前は?」
「毒島夏生。表は子会社の社長だが、裏では人身売買をしている。若い女を誘拐し、援助交際や薬のモルモットにしている最低な男だ」
その男の声には、相当な憎しみが込められていた。そういう機微が見分けられるのも、長年この仕事をやってきて培った物だ。
楓が便利屋をするにあたって、決めている事がある。依頼人を信用しない、依頼人に信用させる、だ。
自分の手を汚す事も出来ず、他人に殺しを依頼するような人間を信用出来るはずもない。
しかし、仕事を遂行したあとで金を渡す事を渋ったり、警察に通報しないように、相手には信用させるのだ。
過去に、お前の正体やしている事を警察に言われたくなければ金をよこせと言ってきた馬鹿がいた。
楓はどうぞ、と答えた。こういう例があるので、信用させると言っても、本名は偽り、姿も変装という上で飽くまでも「便利屋」としての彼女を信用させるのである。
一通り話が終わり、依頼は成立。
楓はとりあえず家に向かった。

ロキは、この国では何をするにも金とやらが必要だという事を勉強した。
しかし、その方法が分からない。人間から脅し取る、ロキならそう思いつくのは必至だったが、するとまた面倒になるという事も学んだ。
すると、街の一角にある空手道場の窓にこんなチラシが貼られていた。
「主将に勝てたら、十万円!」
十万円にどれほどの価値があるか分からないが、ロキはとりあえず、その道場に入ってみた。
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