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イチバンノタカラモノ。

第1章 デアイ、ハジマリ。


楓にしては珍しく、今日は大失敗をしてしまった。いや、「大」という程のものでもないのだが。
今日、学校が開校記念日で休校だったのだ。確か昨日教師に言われたのだが、大きな仕事が入ってしまったため忘れていたのだ。
このまま家に帰るのもつまらないし、今日は依頼もまだ入っていないので、楓は久々に東京を闊歩する事にした。
そんな時だ。一軒のレストランから、怒声が聞こえた。
「おい!散々食っておいて金がねぇってのはどういう事だ!?」
楓は吸い寄せられるように、その店へ足を進ませた。
見てみると、今朝の男と店主が言い争いをしているようだった。
「アスガルドでは物を食べるのに金など払わない」
「アスガルドぉ?てめぇ外人だろ!?マネーだよマネー!」
「だから、そんなものは持ち合わせていない。ここは食事を出すところだろう。何故金が必要なのだ」
「ねぇ馬鹿!?馬鹿なの!?」
店主はついに怒りを通り越してツッコミを入れていた。
楓はふぅ、と溜息をつくと、その二人に向かった。
「おい」
「あ?」
「すまない、そいつは私の連れなんだ。事情があって金がなくてね。私が戻るまでなにも頼むなと言ったのだが…いくらだい?」
「一万二千円」
「馬鹿野郎かこらぁぁぁぁ!!!!!」
ついロキの腹を思い切り殴ってしまう。ロキは腹を押さえながら、その場にしゃがみこんだ。
泣く泣く金を払い、その場は治まったのだが、どういうわけか楓はロキの手を引っ張って歩いていた。そして、公園で一息つく事に。
「ほら」
「?」
缶コーヒーを差し出す。ロキはそれを受け取るが、しげしげと見つめるだけでなかなかプルタブを開けようとしない。いや、見ていると開け方を知らないようでもあった。楓はロキに缶コーヒーを開けるところを見せ、飲んで見せた。ロキも同じようにする。
「うっ……なんだこれは」
「ん?コーヒーだめだったか?」
顔をしかめるロキに確認すると、予想外の返答が。
「うまい」
「紛らわしいですね!!!」
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