第2章 カコノキズ。
「あー……なんで俺こんな事してるんだろ……真由美にも心配かけてるし」
「……」
かなり情けない男のようだった。
「木下裕司か?」
「だ、誰だ!?」
「いいから答えろ、お前は木下なのか」
「そ、そうだけど、どこにいるんだよ」
掃除用具入れに潜んでいた楓は、そこから出た。木下は驚きのあまり尻餅をついてしまう。こんな男に銀行強盗の手伝いなどさせて大丈夫なのかと、本気で心配になる。
「私は便利屋だ。お前の彼女から銀行強盗をやめさせるように依頼を受けた」
「え、真由美から?」
「あぁ。だから悪いが……しばらく眠っていてくれ!」
言いながら、楓は木下を思い切り殴り、気絶させた。そしてロープでぐるぐる巻きにし、掃除用具入れに閉じ込めておく。その後、ロキに連絡をした。
「この男に成り済ませ」
という文と共に、木下の写真を添付する。ロキはそれを読むと、早速幻覚を使った。
「さて、と」
楓は携帯電話をポケットにしまうと、一階へ急いだ。
「早く金を詰めろ!お前らは動くな!動けば撃つぞ!」
至って典型的な銀行強盗だ。
「ロキ、お前は私を捕らえたフリをして、銃口を私の背中に当てながら移動してくれ」
「承知した」
景気づけに、ロキが壁に銃を向け撃った。注目は一気にそちらに向く。
「何事だ!?」
「この女が二階のトイレにいました!」
ロキはなかなかの演技力の持ち主のようだ。
「う、撃たないで下さい」
楓も負けじと人質の演技をしてみせた。強盗のリーダーであるらしい男は、口に笑みを浮かべ、顎でロキに連れて来い、と指示した。
「おかしな真似はするなよ」
「……ロキ、今だ。撃て」
一瞬の出来事だった。ロキが主犯格の男を急に撃ったのだ。仲間はもちろん、人質も驚いている。