第2章 カコノキズ。
店員に言うと、手続きや契約の為、様々な説明を受けたが、料金プランやサービスについてはロキは全くアテにならないので、代わりに楓が全て済ませる。
「彼氏さんですか?ラブラブでいいですねー」
店員の女性が手続きの最中に言った。
「彼氏じゃない。ただの居候」
ロキはよく意味が分かっていないようだ。「彼氏」はともかく、「ラブラブ」の意味がわからなかったのだろう。
無事契約、手続きが済み、携帯電話がロキに手渡された。
「楓の電話番号は?」
「ちょっと待て」
そう言って操作をすると、ロキの初携帯電話に、初の電話番号とメールアドレスが登録された。
「そこにいてくれ」
ロキはそう言い残すと、店を出て行ってしまった。店員とかえでが顔を見合わせ、首をかしげる。
一分程すると、楓の携帯電話が震えた。出てみると、それはロキの声だ。
「聞こえるか?」
「聞こえてるよ。いいから戻ってこい」
「承知した」
ロキは浮かれた様子で戻ってきた。今の始終のやり取りを見ていた店員がクスッと笑う。
「可愛い彼氏さんですね」
「だから彼氏じゃないって」
家に帰ると、ロキは携帯電話に夢中だった。色々楓が教えたりしている内に、日も暮れ始める。
そこで、また楓の携帯電話が震えた。どうやらロキではない。依頼の電話だ。
「はい。便利屋です」
「あの!わ、私、こういうの初めてで……あの、ホームページを見て電話をしたんですけど!えっと、その……」
若い女の声だったが、言っていることは要領を得ない。相当パニックに陥っているのが分かる。
「落ち着いて下さい。依頼の内容は?」
「私の彼が、危ない事に首を突っ込んでいて。えっと、銀行強盗の仲間に無理矢理……私、どうしていいのか分からなくて」
「分かりました。要するに、あなたの彼を銀行強盗グループから抜けさせればいいのですね?」
「は、はい!そうです!」
女は意気込んでそう言った。その後、彼女の名前や詳しい事を聞き出し、楓は電話を切った。