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イチバンノタカラモノ。

第2章 カコノキズ。


楓には、母、父、兄の三人の家族がいた。家族仲はよく、いつも笑顔溢れる幸せな家庭だった。楓は家族が大好きだった。
しかし、そんな家族にも、楓は言えない秘密を持っていた。それは、ストーカーの被害に遭っているという事だ。
家族を心配させたくない、という当時十二歳だった楓の秘密は、思わぬ形で露呈した。

ある日いつものように家に帰ると、いつもは笑い声が響くリビングがいやに静かだったのだ。喧嘩でもしたのか、でかけているのか、そう思っていた楓だが、どこか胸の内にある漠然とした嫌な予感に気付かぬふりは出来ない。
恐る恐るリビングの扉を開くと、そこには、変わり果てた姿の家族が倒れていた。
楓の思考が止まる。呼吸ができなくなる。体に力が入らなくなる。
白が基調のリビングは、赤く、染まっていた。
そこに一人佇む男がいた。
そう、それが「吉村」である。楓を一年以上ストーカーしていた、憎き男。彼の手には包丁が握られており、それには血が滴っている。
「吉村」は、生気のない目でこちらを見た。楓は自分も殺される、と覚悟した。いや、殺してくれと思っていたかもしれない。
「吉村」がゆっくりと近づいてくる。刺される、そう思い目を瞑った瞬間、奴は耳元でこう囁いた。
「見つけて」
と。
その約束を、いや、挑発を受け、そして復讐の為、今楓は便利屋として裏の仕事をこなしながら、「吉村」に関する情報を求めている。

そう語り終えた後、しばらくの沈黙がまた二人を襲った。
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