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イチバンノタカラモノ。

第2章 カコノキズ。


楓がそんな目に遭っているとも知らず、ロキは今日も今日とて街を散歩していた。ロキは黒髪を肩の辺りまで長く伸ばし、身長も高い。そして顔は整っていて、更には欧米風の顔立ちだ。自然と周りの目を引いてしまう。都内とは言え、目立つだろう。スカウトも何度もされたし、ナンパもされる。
「お兄さん」
馴れ馴れしく肩を叩いてくる派手な女。綺麗の部類に入るだろうが、楓と比べたら大したものではない。ロキは何故か自然と他の女と楓を比べるようになってしまった。
「ねぇ、一人?よかったらお茶でもしない?」
「お前と茶など、時間の無駄だ」
そう冷たく言い放つと、ロキは女を置いてスタスタと歩いて行ってしまった。
歩いていると、一軒の電気屋が目に付いた。なんとなしに入ってみると、ロキには到底使いこなせないであろうわけの分からない電化製品が所狭しと置いてある。

ロキは初めてテレビを見た日の事を思い返した。
「これはなんだ?」
「テレビだよ、テレビも知らないのか」
楓は呆れた風に言った後、リモコンでテレビをつけた。すると、薄い箱の中で、急に人間が歌を歌い始めたのだ。ロキは驚き、何度も横から後ろから、テレビを眺めてしまった。
「人間が中に入っているぞ!」
「えっと、なんつーのかな、うん。中に入ってるんじゃなくて、映し出されてるというかだね……」
楓はテレビの説明に苦吟していた。
そんな事を思い返し、ふっとロキが微笑むと、次は携帯電話のコーナーに足を止めた。確か楓もこの手の類のものを持っていた気がする。実際使った事はないし、彼女が使ったところを見たことはないが、携帯電話自体は見たことがある。今はガラケーなどと呼ばれるものよりも、スマホと呼ばれるものが人気高いと聞いたが、実際どんな違いがあるのか、ロキには分からない。
「携帯電話、お探しですか?」
店員の男がそうロキに話しかけた。
「いや、見ていただけだ」
勝手にこのような物を買っても楓に怒られるだけだし、何しろ使い方が分からないので買うのは踏みとどまった。が、少し欲しい、という気持ちも芽生えていた。
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