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イチバンノタカラモノ。

第2章 カコノキズ。


「わ!」
「どうしたの?」
「見て、あそこの外国人、めっちゃかっこよくない?」
「うっわ本当だ!背高いし。誰かの知り合いかなぁ?」
その会話を聞いてしまった楓は、恐る恐る校門を見た。どうかこの予感が外れて欲しいと思っていたが、悪い予感というのは存外あたってしまうものだ。
「楓!」
ロキが校門のところで楓に手を振っている。
楓はかつかつかつ、と革靴を鳴らし、一直線にロキに向かっていった。
「おーまーえーはー」
「な、何故怒っているのだ?」
楓は確かに一際周りの目を引いてしまうが、極力目立つのを避けている。それは、後に仕事に支障をきたす恐れがあるからだ。そんな事を知らないロキは、外国人のイケメンが自分を学校まで迎えに来る、というとても目立つ行動を取ってしまったわけである。

「この人だよ!私と由佳が見たの!」
友人達はここぞとばかりにロキを囲み、しげしげと彼を色々な角度から見ている。ロキは戸惑ってはいたものの、そこまで不快感を顔に出してはいない。それが一週間少しで彼が成長したからか、それとも元々目立つ事が好きなのかは分からないが。
その友人達をかき分けて、楓がロキの前に立つと、ロキはショッピングバッグを見せてきた。
「タイムセール、そろそろ始まるぞ」
随分所帯じみたアスガルド人である。
「それでわざわざ迎えに来たのか?」
「あぁ。これを持って行けば二円安くなるのだったな?」
もう一度言うが、随分所帯じみたアスガルド人である。
ロキは意外と順応性が高いのかもしれない。もちろん、アスガルド人であり、祖国へ帰りたいという気持ちはあるのだろうが、それを盾にして駄々をこねるような真似はしない。自分は自分の運命を受け止めるしかないのだと、わかっているようだった。
しかし、この姿を、兄のソーや父オーディンなどが見たらどう思うだろう。それは語り部の私も少し見てみたいものだ。

話を戻そう。
「はぁ……まぁ、そういうわけで、タイムセール始まるから、行くな。ほら、行くぞ、ロキ」
「あぁ」
「明日根掘り葉掘り聞くからねー!」
友人の最悪な予言を聞き、転校したいと割と本気で思った楓だが、とりあえず、上手く帰ることに成功した。
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