第8章 朝ご飯の卵焼き
仕事終わりにマキノの店に寄って色々話しているうちに、帰りが遅くなってしまった。
ルフィ達はもう寝ているだろうか。
(ちゃんと学校の準備したかな…)
ドアを開けるとまだ居間に電気が点いていて、玄関には男物の見慣れない靴がある。
(誰だろ?エース…?)
こんな夜更けに訪ねてくるのは、エースしか思いつかない。
サボは彼女がいるので連絡もなしに、こんな遅い時間には家には来ないからだ。
「ただいま〜」
居間に入るといつものように三人がテレビを見ながらのんびり過ごしていた。
エースはいなくて首を傾げるが、ソファに誰かが寝ているようだ。
「誰がそこで寝てるの?」
その言葉に、全員が気まずそうに顔を逸らした。
疑問に思いながら、ソファが見える位置に回り込んで寝ている人物を確認する。
絶句した。
ソファで寝ていたのは、出張に行っているはずのハイスペックイケメンだったから。
(…………何これ、どういう状況?)
「ごめんね、アンちゃん……」
バツが悪そうにナミが成り行きを説明する。
ゾロが飲ませた酒がとどめの一撃だったんだろう。
夕飯が終わった直後からローは寝始めて全然起きないらしい。
「どうするのよ?起こしなさいよ、ルフィ。あんたが連れてきたんでしょ?」
「何回起こしても起きねぇんだって。それにもう終電ないだろ?いーじゃん、このままで」
全然よくない。絶対よくない。
「ねーちゃんの飯、すげー美味いって言ってたぞ。それに母ちゃんに土産くれたし」
仏壇にはお菓子の箱らしき物が供えられていた。
ローに母のことを話した覚えはなくて、きっとルフィ達に買ってきたつもりだったんだろう。
すやすや気持ち良さそうに眠るローを見て、アンは深い深いため息を吐いた。
ほとんど知らない男を家に泊める義理なんてないのに。
「もうあんた達さっさと寝なさい。明日学校なんだから。…ゾロはそこに正座して、今日は容赦しないからね」
ゾロの表情が一変したのを見ないフリして、ルフィとナミは助かったと言わんばかりに早足で自分達の部屋に向かった。
しばらくしてこってり絞られたゾロがルフィの部屋に入った時には、元凶のはずの彼はすでに夢の中だった。