第13章 彼の妹
「いただきます」
ラミは卵焼きをひとくち、口に運ぶ。
「おいっしい!なにこれ?」
ラミは和食が好きじゃない。けれども味噌汁も炊き込みご飯も、今までに味わったことがないくらい美味しい。嫌煙していた和食がこんなに美味しかったなんて信じられない。
「そりゃ、アンの卵焼きは美味いよなぁ」
「お味噌汁と炊き込みご飯も褒めてくれません?」
「もちろん、マキノさんの料理も絶品だよ」
「頭が親バカなだけだ。気にするな、マキノさん」
おいしい、と子どもみたいにパクパク平らげるラミを大人達は微笑ましく見守った。
「ごちそうさまでした!すみません、私お金持ってないのに」
「まかないだから、いいのよ。もうすぐお店は閉めるから、アンちゃんに送ってもらって。先生によろしくね」
申し訳なさそうなラミに、マキノは優しく笑った。
アンはバイクを取りに行ったのだという。数分して、店の入口がガラガラと開き、アンが姿を見せた。着物姿とは打って変わって、ジーンズに薄手のウィンドブレーカーという一見男性に見間違えそうな格好である。
「トラ男くんの家まで送るから。マキノさんにお礼言うのよ」
ラミはハッとして、皆に向かって頭を下げた。
「ありがとうございました」
今までの自分は何だったんだ。すごく恥ずかしかった気がする。
「またいつでもいらしてね」
女将も、お客さんも、素敵なお店だった。