第8章 朝ご飯の卵焼き
ナミが食卓に焼き立てのホッケや豚汁を並べて、すぐにテーブルの上はいっぱいになった。
「肉がない」とか文句を言いながら、ルフィは目の前の料理を平らげていく。
「早く食べないとルフィに食べられちゃうわよ」
「ああ…、いただきます」
ナミに急かされ、手を合わせると豚汁やナスの煮びたしを口に運ぶ。
美味い。
つやつやのご飯も、焼き立てほかほかのホッケも美味い。
「美味いな……」
自然と笑みがこぼれた。
「ねーちゃんの飯は日本一だからな!」
そんな言葉もお世辞とは思えないほど、アンが作ったものは不思議と口に合う。
ローは長く外国で暮らしていたし、母親も医者で忙しい人だったから、出来合いのものや現地のホームヘルパーが作ったものを食べることが多かった。
だから和食に馴染みはない。
「あんた、飲める口だろ?」
いつのまにか隣に座るゾロは日本酒の一升瓶を持っていた。
「ゾロ、またアンちゃんの部屋からお酒取ってきたの?もー、怒られるわよ」
酒に対する嗅覚が異常に優れているゾロは、アンが何度隠しても酒を見つけ出してしまう。
「二番目にいい酒だし、客がいるから大丈夫だろ」
(大丈夫じゃねぇだろ、未成年が)
悪びれる様子もなくゾロはグラスに酒を注ぐ。雑味がなくまろやかな、なかなかいい酒だった。
美味い料理と酒と居心地のよい空間で、出張先で溜まった疲れがほぐれていくようだった。