第8章 朝ご飯の卵焼き
二階建ての一軒家のその家は、みるからにボロボロの古びた家屋だった。
雨漏りがひどいのだとナミは苦笑したが、中は掃除が行き届いてそれなりにきれいだった。
一階に水回りと台所、居間があり、二階はアンとルフィの部屋があるらしい。
「ナミー、今日の飯なんだ?」
「えっとね…、ホッケの干物とナスの煮びたし。豚汁もあるみたい」
スマホを見ながらナミが答える。今日はアンは仕事で遅いらしい。
そんな日はある程度アンが準備した夕食を温めたり仕上げるのはナミの役目だ(ルフィにやらせるとえらいことになる)。
「ねーちゃん、今日は手抜きだな!肉ないのか?肉!」
(最高じゃねぇか…)
ルフィは不満らしいが、ローにとっては優しい味わいの和食の方がありがたい。
「毎日肉なんてないわよ!ほら、先にお母さんのご飯!」
「ほーい」
ナミからご飯が入った小さな茶碗を受け取ると、ルフィは仏壇に向かった。
「母ちゃん、ご飯だぞ!」
線香を立てるとチーンと鐘を鳴らし、彼は手を合わせた。動きに迷いはなく毎日の習慣のようだ。
(……母親は亡くなったのか)
仏壇には遺影が飾られていた。
穏やかに微笑む姿はまだ若く、少しアンに似ていると思った。
「……これ、供えてもいいか?」
ローが手に持っていたのはお土産の北海道の定番お菓子だった。どうせならもっと気の利いた物を持ってきたら良かったが仕方ない。
「うん、いいぞ!」
破顔したルフィの横で手を合わせた。
彼女の母親はどんな人だったんだろうかと思いを馳せながら。