第8章 朝ご飯の卵焼き
ルフィとゾロ、ナミは空港に来ていた。
仕事のアンの代わりに、沖縄に帰るというガープを見送りに来たのである。
夏休みにまた来ると言い残したガープを乗せた飛行機が飛び立ったのは1時間前。
食の宝庫の空港をただで帰るはずはなく、三人は土産物店を中心にあっちこっちと試食を楽しんでいた。
「あそこ中華まんあるぞ!!」
「お土産に買ってそろそろ帰る?ゾロ、並んできてよ。後で割り勘ね」
「何でおれが並ぶんだよ?それに金ねぇぞ」
「ウソでしょ?ルフィはいくら持ってるの?」
「えーと、380円!」
そんなの帰りのバス賃ぐらいにしかならない。
アテにならない男二人に落胆しながらナミは思案した。
必要以上の金は出したくないものの、いつもご飯を作ってくれるアンに中華まんぐらい買って帰ってあげたい。
前方に視線を向けていたナミは問題を解決してくれるその男を見逃さなかった。
「あー!!トラ男くん!」
駆け寄ってきた女にいきなり腕を掴まれて、ローは心底驚いた。
「ナミ屋?何だ、お前ら…??」
「あれー、トラ男じゃん。何してんだ?」
ルフィとゾロも近づいてきたが、アンはいない。高校生が空港に何の用かと思ったが、意中の彼女がいない時点で興味は失せた。
「出張帰りだよ」
「ふーん、大変だな」
大変だとは一ミリも思ってなさそうな口ぶりでルフィは呟いた。
「そんなことより、トラ男くん!中華まん買って!」
「は?そんなもん、自分達で買えよ」
「おねがーい、アンちゃん中華まん大好きなの」
「……好きなだけ買え」
ナミにカードを渡すと、一目散に彼女は列に並んで、パンパンになった袋を両手に抱えて戻ってきた。
「ありがと〜!アンちゃん喜ぶわ」
ナミに程よく金づるにされていると気がついたが、アンに恩を売れるなら悪くはなかった。