第7章 弟の進路
「今朝のトラファルガー先生見た!?スーツ姿、超カッコ良かったんだから!」
「写真がSNSで回ってきたよ〜。待ち受けにしちゃった」
「北海道の大学に呼ばれたんだってね。しばらくあの姿拝めないとなるとやる気出ないなぁ」
今日のコンビニに立ち寄る女子職員の会話は大体同じ感じである。
イケメンがスーツを着て、それが超イケメンで、その写真がすごい勢いでSNSで広まっている。
なんせ、アンのスマホにもサボとエースの両方から送られてくる程である。どういうルートで回ってるのだ。
とにかくハイスペックイケメン、恐るべし。
仕事を終えたアンは、お弁当を取りに来たレイジュと一緒にランチをすることにした。
中庭は職員や患者の憩いの場である。
レイジュは青空を見上げると「そろそろあっちの病院に着いたかしら」と呟やいた。
「小児のすごく難しい症例で、オペするために呼ばれたのよ。前に一度成功させてるから名前が売れちゃってね」
「へぇ…」
正直医学のことはよくわからない。
彼女は終始上機嫌だった。今日のおかずがオコゼの唐揚げだったこともその一因だろう。
「あ〜、しばらくいなくなってせいせいしたわ。あいつのオペ入ると神経使うのよねー。血圧安定しないってのに、無理難題ふっかけてくるし。明日からアンの弁当の写真送って自慢してやるわ」
「またそんなこと言って。なら何で連絡先教えちゃったの?」
心当たりはレイジュしかないのに、「何の話?」と彼女はオコゼをもぐもぐしながら目を丸くした。