第7章 弟の進路
「なんだとー!!そんなのウソだー!」
ルフィはウソップの長い鼻を思いきり引っ張った。残念ながら鼻は伸びない。
「いてぇな!ウソじゃねぇ。バイク屋継ぐって言っても父ちゃんまだまだ元気だし、ちゃんと専門学校とかで基礎から学んだ方がいいんじゃないかって言われたんだよ」
ウソップは幼い頃から細かいものをいじったり組み立てたりするのが何より好きだった。
家業を継ぐことを決めたのは、毎日父の背中を見ていたからだ。
ヤソップの普段のセクハラエロ親父姿はともかく、新しい息吹を吹き込むように壊れたバイクを直す姿は尊敬の対象だった。
勉強は嫌いだが、父に近づくために学ぶのなら悪くない。
ウソップはそう思って進学することを決めた。
ルフィはぐぬぬとうなった。これでは味方が一人減ってまた姉に責められる。
案の定、アンは何か話しかけようとしたのだが。
ちょうどそのとき、作業着のヤソップが帰ってきた。
「おー、アンちゃん今日も別嬪さんだなぁ。バイクちゃんと直ったぞ。おれの手にかかりゃあ間違いなしだ」
「ありがとうございました」
アンは丁寧に頭を下げ、ヤソップは豪快に笑った。
「おれもアンちゃんみたいな美女に跨られてぇなぁ…。母ちゃん!冗談だよ!!」
ウソップの母は呆れたのか家の中に入って行った。
ツヤツヤに磨かれたハーレーにアンは満足気だ。まだしばらく一緒にいられる。まさに恋人が帰ってきたような気分だ。
「今後共ご贔屓に!!あ、それとルフィ…」
ヤソップはルフィを手招きして、彼の耳元でヒソヒソ問いかける。
(何の話してるんだろ……。まあ見当はつくけど)