第7章 弟の進路
店員のワンダとキャロットが食事を運んできてくれた。
「久しぶりだな。イヌアラシが会いたがっていたが今不在なんだ。ネコマムシなら奥で寝てるんだが」
「そう。私も会いたかったけど残念ね」
この店は昼と夜で顔が変わる。昼は甘味処、夜は定食屋として営業していた。昼の店主はイヌアラシ、夜はネコマムシというそれぞれ犬と猫に似た人物だ。
「アンの料理は美味しいから、スカウトするつもりなんだよ!こないだもらったおはぎもすごーく美味しかった!」
「ありがとう。でも料理はともかく、お菓子作りは得意じゃないのよ」
おはぎはともかく、ケーキや焼き菓子は得意ではない。母は何でも作れる人だったけど。
「ルフィもゆっくりして行ってくれ。白玉のお代わりならまだたくさんあるしな」
「ありがとう!もらうな!」
甘味処を出た後、二人はバイクショップに向かった。
店の前ではウソップが油まみれの手で原付バイクをいじっている。長い鼻の下も黒く汚れていた。
「よぉ、ルフィ!姉ちゃんのバイクか?修理は終わったみたいだけど、父ちゃん出掛けててさ。すぐ帰ると思うから、ちょっと待っててくれよ」
お言葉に甘えて店先で待たせてもらうと、ウソップの母がお茶を出してくれた。
「アンちゃん、もうすぐ三者面談でしょ?うちの子ったらバイク触ってばっかりで全然勉強しないのよ」
「うちも同じですよ。進学するつもりが全然ないんだから」
またその話かとルフィはうんざりした。だかここには味方がいる。
「勉強なんていらねぇよな?ウソップだって父ちゃんの店そのまま継ぐんだし」
「いやー、進学は一応するんだ」
見事な裏切りだった。