第7章 弟の進路
アンの後ろを満身創痍の身体を引きずってルフィは歩く。
アンの次はレイリーから稽古をつけてもらって、心身共にボロボロだった。彼には珍しく落ち込んでいる。
「鬼姉…、いや鬼ババア…」
空手道場での手加減のない所業はもう鬼としか思えない。
聞こえないように小声で呟いているとアンが急に振り向いて、ルフィはビビる。
「…私、バイク取りに商店街の方に行きたいんだけど」
「あー、ウソップんとこ?」
アンの愛車の調子はすこぶる悪く、ヤソップバイクショップに修理に出したのが一週間前。いつもお世話になっているのがルフィの同級生ウソップの父、ヤソップだ。
「え〜?おれ黒足行きたかったのに!」
「ラーメンは今日は我慢して。代わりに甘味処連れて行ってあげるから」
ルフィの顔がぱぁっと明るくなる。
「よし、そっちでいいぞ!おれ、ねーちゃん好きだ!」
「調子のいい子ね」
駅前にある、東の海商店街はアンが住んでいる所から一番近い商店街である。ここにバイクショップと甘味処、スーパー、八百屋などなどいろいろな店があり大抵の物はここで揃う。
真っ先に甘味処へと向かうルフィを追いかけていくと、店の前にはうさぎによく似た少女が立っていた。
「あ、ルフィ!アン!久しぶり〜!
えへへ、撫でて撫でて〜」
「キャロット、久しぶりね」
頭を撫で撫ですると彼女は至福の表情で笑った。可愛い。
キャロットは甘味処「象」の看板娘である。萌黄色の着物に前掛けをつけた姿がよく似合う。ぴょんぴょん飛び跳ねるように店内に案内してくれた。
「ご注文は?」
「おれ、白玉あんみつ大盛り!」
「私は抹茶アイスで」
「はいはーい!すぐご用意します」