第6章 研修医の診断
「持ち帰りの餃子だよ。毎度あり」
会計を済ませてサンジから餃子を受け取る。いつの間にか外には行列ができていた。
特に宣伝していなくても美味しいのだから当たり前だと思う。
レジではアンとローがどっちが払うか譲り合わない二人はもめにもめたが、結局アンが負けた。
ローがさっさとお金を出して、サンジが受け取ってしまうからだ。
「サボからも何とか言ってよ!」
「いーじゃん、奢ってもらえて」
よくない。全然よくない。いつまでこの人にお弁当作るんだろう。
「せんせー、ごちそうさまでした〜」
「トラ男、ありがとな!」
頼みのサボまでまるっと餌付けされて、アンは肩を落とす。ルフィも含めて、自分の周りの男どもは頼り甲斐がない。
「……早く帰ろう。ゾロとナミちゃんが待ってる」
「じゃ、ルフィまたな!」
「夏休みになったら絶対遊んでくれよ!」
シャツの裾を掴んで名残惜しそうなルフィにヘルメットを被せる。しぶしぶ彼はサボから離れてバイクの後ろに乗った。
「じゃあね、サボ」
「おー。気をつけてな」
颯爽と帰っていく二人を見送るとサボはローをじっと見る。
「せんせー、家どっち?」
「あっちだが」
「じゃあおれも同じ方向だから連れて帰って」
「…………」
勝手知ったるとばかりにサボは今度は助手席に乗った。ニヤニヤと何かを企むような顔をしながら。
♤
信号待ちでずっと外を見ていたサボが話しかけてきた。
「もしかして彼女とか乗せるの?」
「いねぇよ」
彼女なんていないし、そもそもこれはコラソンの車だ。仮に恋人がいても勝手に乗り回せない。
「ふーん、じゃあアンのことはそこそこ本気ってこと?」
「なっ…、何言ってんだ?」
信号が青に変わる。アクセルを思い切り踏んでフェラーリを急発進させた。
「おおっ!危ねぇじゃん!」
何でもないフリをしたら余計ムシャクシャした。
もうとっくに、自分の気持ちには気がついていたから。