第6章 研修医の診断
ローが一旦席を立った。病院からの電話らしい。
「で、どーゆー関係?あの医者と」
改まって聞かれても困る。強いて言えばコンビニ店員と客の関係。弁当を渡しているのはいびつだが、客には違いない。
「いい医者だぞ。救急隊の中でも評判いいし」
「そんなこと言われても、私嫌われてるし」
いつも睨まれてるし、面と向かって嫌いだとも言われた。
(嫌いな相手の弁当なんか食わねぇだろ…)
大体の事情はさっき車の中でルフィから聞いた。ラーメン代の見返りに弁当を作っていること。
サボが呆れたような視線を向けると、アンはため息を吐く。
(ため息吐きたいのはこっちだよ…)
サボにとってはアンだって姉か妹みたいな感覚だ。どうせなら好条件の相手と幸せになってもらいたい。
根っからの姉御肌のアンは自分のことはそっちのけで頭の中はルフィのことばかり。そんなのだからもう何年も彼氏はいないし、浮いた話のひとつもない。
「そんなことより、この子ってばまた大学行かないって言うの!三者面談も近いしさ」
「ねぇちゃん、その話もう聞き飽きたぞ」
呆れ顔のルフィのほっぺたをアンは両手で思い切り引っ張った。
「あんたのために悩んでるんでしょ!」
「い゛だい、い゛だい…!ごめ゛ん」
(何とかしてやらねぇと……)
♤
(きょうだいみたいな従兄弟か……)
仲睦まじく話す三人の様子をそっと覗き見る。
病院以外で会うことはないから、彼女のことは結局何も知らないのだ。
誰にでもいい顔するくせに、本音を言おうとはしない。頼られるのは得意でも、誰かを頼るのは苦手なような気がした。
(何とかして連絡先だけでも……)