第6章 研修医の診断
多分ローに誤解されていると察したサボは、ルフィの言葉を訂正する。
「ルフィは兄貴みたいに思ってくれてるけど、本当は従兄弟なんだ。きょうだいは姉のアンだけだよ」
(ああ、なるほど……。アホそうな弟だし、きょうだいと従兄弟の区別もつかないのか?)
サボはローが首から下げた名札をじっと見る。
「もしかして、あんたがトラファルガー先生?」
「ああ、そうだが」
「へぇ!若くてびっくりしたよ。おれは消防士なんだ。救急車に乗ってることもあるけど、あんたの評判はよく聞くよ。救急医としても一流だって」
「それは光栄だな」
「ひょっとしてエースの診察もしてくれたのか?双子の兄なんだ。世話になったな」
「へぇ、双子の兄……。その割には似てねぇな……?」
むしろルフィとエースの方が何となく似ていて兄弟っぽい。
そう思ったとき、頭の中で構築されていた何かが崩れていく。
(エースって奴が、双子の兄ってことはアンとも……)
「従兄弟だけど?」
ルフィ達とコンビニに向かったローは、不審そうな顔をしたアン本人からそう告げられた。
(何だよ、それ……。紛らわしい行動取りやがって)
完全に勘違いしたのは自分の方なのだが棚に上げておく。内心ホッとしたのは絶対気づかれたくない。
「ルフィ、お見舞い終わったらここに戻ってきて。私ももう仕事終わりだから一緒に帰ろ」
「でもサボが久しぶりだから、メシでも一緒に食おうって」
「じゃあ、黒足でも行く?」
ルフィは二つ返事で頷くと、サボの後を追って駆けていく。
「仲がいい従兄弟だな」
「そう?小さい頃一緒に暮らしてたから」
アンはそう言うと、帰り支度のため店の裏へ行った。