第6章 研修医の診断
手術室に入ると主任看護師のイッカクに恐る恐る声を掛けられた。
「どうしたんですか?チェーンソー持った仮面の男が裸足で逃げ出すような顔して」
(……どんな顔だよ…)
「昨夜当直だったからな。睡眠時間が足りてない」
「そんなのいつもじゃないんですか?」
どうやらオペ室の看護師には万年寝不足だと認識されているらしいし、あながち間違いではなかった。
シャチとペンギンは今日は休み。八つ当たりできる相手がいなくて、ストレスを抱えながらもオペは滞りなく終わった。
術後集中治療室に入った患者の診察を終えると同時に待ち構えていたようにPHSが鳴る。ベポからだ。
『キャプテン、困るよ〜。ちゃんと他科からの紹介患者さん診てくれないと!』
「急を要してないんだろ。明日診察するよ」
『頼むよ〜。ぼくも怒られるんだからさ』
正直あの病室にはもう行きたくなかった。
(さっさとあいつ退院したらいいのに……)
♤♠︎♤
学校の帰りにエースのお見舞いに訪れたルフィは、もう一人の最愛の兄の姿を見つけた。
人目もはばからず抱きつく。
「サボ!!」
「うわっぷ!ルフィ!ちょっと見ないうちにまたでかくなったな!」
「へへっ!サボもエースの見舞いか?」
「ああ。それとパジャマとか持ってきた」
「んじゃ、一緒に行こう!」
「先にアンの方行くよ。ここのコンビニで働いてんだろ?」
だだっ広い病院の中をコンビニの方へ歩く。すると機嫌悪そうにこちらへ向かってくる医者とすれ違った。
「あー!トラ男!!」
馬鹿でかい声に振り向かないわけにはいかなかった。
(……弟。それにあいつはこないだもいた奴だな…)
サボの顔にも何となく見覚えがあった。エースの友達かなんかだと思っていたが、ルフィとも知り合いなのだろうか。
「ルフィ、知り合いか?」
「あいつはトラ男!ラーメン奢ってくれるちょーいい奴なんだぜ!」
「ラーメン?何で??」
「トラ男、サボはおれのにいちゃんなんだ!」
「……兄もいたのか?」
「ああ!それも二人いるぞ!」
えっへんとルフィは胸を張った。
(ってことは、弁当女の兄?いや弟か?)