第6章 研修医の診断
「で、何でおれに聞きにきた?内科の医者に聞けばいいだろ」
「聞いたんですけど、先生手一杯で……」
本日の外科系の当番医師、ローのところにチョッパーは来ていた。
酔っ払って頭を打った患者の縫合処置を終えたばかりで、念入りに手を洗っている最中である。
「腸炎なんだろ。炎症反応は高いが、まだ若いし既往もない。入院の必要はないと判断したんならそれでいいと思うけどな」
「でも、ぼく自信がなくって……」
誰かにこれで大丈夫だと、お墨付きをもらいたかった。
こんなんじゃ行く末が案じられる。医者である以上今まで学んだ知識と経験から責任を持って診断を下さなければならないのに。
(とか言ったら、厳し過ぎるってコラさんに怒られるな…)
ローだって診察を待っている患者は何人もいる。
それでも(コラさんの)可愛い後輩を無視することはできない。
「そのCT見せてみろよ…」
「はい!」
チョッパーは卓上のパソコンに先程のCTの画像を表示させる。
(…これは……、なるほどな…)
すぐにわかった。この患者を今の段階で帰宅させるわけにはいかない。
「この患者が発熱と腹痛を訴えて、お前は何を疑った?」
「……胃腸炎です」
「他には鑑別するべき疾患は?」
「胆嚢炎や憩室炎とかって可能性も。あ…」
チョッパーはCTを凝視する。
(…確かに腸炎の診断はついたけど、あの部位がちゃんと写ってない…?)
「おれなら造影CTをして確認するけどな」
「わかりました!トラファルガー先生、ありがとうございました!」
チョッパーは頭を下げて診察室を出て行く。処置室にいるエースの元へ急いだ。
(…気がついたか。勘はいい方だな)
「マルコに一応連絡しとくか。患者の名前は……、エース…?」
どこかで聞いた名前だった。忌々しい記憶はまだ新しく、忘れることはできていない。
(……まさかな、ただの偶然だろ)