第5章 好きなわけない
(……帰りてぇ…)
「先生、お酒何にします?」とか「お料理取り分けましょうか?」とか、もうほっといてくれと思う。
隣の女が次々に代わり、両サイドから牽制し合いながら取り入ろうとするもんだから、それにも疲れる。
まるでホステスがしのぎを削るようだ。
料理だってパンが出てこないのは幸いだが、パスタもピザもそんなに好きじゃない。酒もワインより日本酒や焼酎の方が好きだ。
そろそろ我慢の限界だった。病院からの呼び出しの電話のフリをしてローは席を立つ。
「トラファルガー先生、帰っちゃうんですか!?私、お見送りしますね!」
「私も!!」
女子全員が席を立とうとして、さすがにそれは制した。
完全にシャチ達は置いてけぼりだ。
(めんどくせぇ……)
「どうぞお構いなく」
ローは上っ面だけで笑うとその場を後にした。
♠︎♤♠︎
気心が知れた仲の人と飲むのはこんなに楽しかったっけ?
そう思うぐらい皆でずっと笑っていた。ここに来た目的を忘れるぐらい。
「そういえば話って何だったの、サボ?」
呼び出された理由をまだ聞いていなかった。
「ああ、えっと……」
今までバカ騒ぎしていたのとはうって変わって、サボは佇まいを直して正座した。コアラも頬を染めてサボの様子を伺っている。
「……実は、おれ達結婚しようと思って」
サボは照れ臭そうにそう告げた。
「…おお。マジか」
「わぁ!おめでとう!」
「あのね、二人には一番に伝えたかったの。喜んでもらえる?」
「当たり前じゃん!カンパーイ!!」
喜びが弾ける。こんなに嬉しいのは久しぶりだった。