第5章 好きなわけない
「エース!」
アンは助けに入った男に破顔した。ローが見たことがないような笑顔で。
「ごめんな、おにーさん。こいつはおれの連れなんだよ」
「す、す、すみませんでしたーー!!」
ナンパ男は一目散に逃げて行く。
「よっ!久しぶり」
「もー、エースが遅れて来るから変な人に絡まれたじゃない」
「悪りぃ。電車で寝ちまった」
「全くもう。早く行こう。サボ達が待ってるよ」
アンはエースと呼んだ男の袖を引っ張った。連れ立って繁華街の方に歩いて行く。
「…あれ?アンちゃん?彼氏いないって言ってたのに…。しかもイケメンじゃん。
って、キャプテン何て顔してるんですか!?怖っ!」
「あ゛? 普通だ」
「いやいや、井戸から這い上がった幽霊も裸足で逃げ出します」
(どんな顔だよ……)
何故かわからないがムシャクシャする。
別にアンに彼氏ぐらいいてもいいはずだ。それに休日に何してようとあいつの自由だ。
それなのに。
『ローはアンちゃんが好きなんだなぁ!』
コラソンにそう言われた記憶が蘇った。
(……何だよ、好きって…。そんなはずないのに)