第5章 好きなわけない
土曜日。
仕事が休みのアンは出掛ける準備をしていた。
(化粧、濃すぎるかな…)
久しぶりにしっかり目にメイクをして、白地のブラウスとワインレッドのロングスカートに着替えた。
背中まで伸びた髪はハーフアップにして、シュシュで結ぶ。
リビングに降りると三人が勢揃いしていた。こういうときにおしゃれな女の子が近くにいるのは頼もしい。
「ナミちゃん、おかしくないかな?」
「やだ、アンちゃん、可愛い!いつもそういう格好してたらいいのに〜」
「よかった。晩ご飯、エビフライとメンチカツ作ってるから。サラダもちゃんと食べてね」
「エースとサボ来るんだろ?おれもやっぱり行きてぇよ!」
留守番のルフィは不服そうに頬を膨らませた。
「月曜日からテスト期間でしょ?それに今日は遅くなるし、堂々と居酒屋に未成年連れて行けないの」
「チェッ!姉ちゃんのケチー、のんだくれー」
一番の理由はルフィを連れて行くと騒がしくてちゃんと話ができないから。
今日は大事な話があるだろうとなんとなく思っていた。
「アンちゃんが飲み会なんて珍しいもん。楽しんできてね。私、ゾロがアンちゃんのお酒飲まないよう見張っとくから」
「の、飲んでるわけねぇだろ…」
ゾロは慌てて否定したが、キッチンの日本酒の中身が少しずつ減っていることは気づいていた。それも高いのばっかり。
「よろしくね。
ルフィ、サンジくんとこ行ってもいいけど、お金は払って帰ってね。絶対!」
「えー、でもトラ男払ってくれてるぞ?」
「それはもうやめたいの!弱み握られてるみたいで嫌なのよ」
「そうか?ほーい」
気のないルフィの返事。
でも、ハイスペックイケメンにこれ以上借りを作りたくない。