第5章 好きなわけない
「……どういうことだよ。コラさん元々あの女と知り合いなのかよ!?」
「そうだけど、言ってなかったっけ?」
ローから怒りのオーラを感じ取ったコラソンはたじろいだ。
「聞いてねぇよ…!」
確かに前にコンビニで会ったとき、やけに親しそうだった。
「いや、連絡先とかは知らねぇんだよ。昔の上司のお孫さんでさ。会うの10年振りぐらいだけど」
「昔って、刑事だったときか?」
コラソンは医者になる前、警察官だった。犯人に刃物で刺されて大けがをして入院した経験をきっかけに医者を志したそうだ。
ちなみにコンビニの店長、クザンは元同僚。
「アンちゃんのお母さん、小料理屋してたんだ。何回か行っただけなんだけど、すげぇ美味くってさ。アンちゃんも弟の面倒みながらよく手伝ってたよ」
母親が小料理屋なら、弁当が美味いのも頷ける。
「久しぶりに病院で会ってびっくりしたよ。大人になって、すごい美人さんになったよなぁ」
(なんだよ…。もしかしてコラさん通したら、あっさり連絡先とか手に入るのか?)
今までの努力は何だったのだろうか。
「ほれ、サービスだよ、お二人さん。アンちゃんの差し入れ。お前来たら出してくれって」
サンジはほかほかの焼きおにぎりをローの前に出した。
「ロー、これマジ美味いぞ!」
「ああ、美味ぇ…」
香ばしい焼きおにぎりにローは顔を覆った。何であいつが作るものはいちいち口に合うのだろう。
(もう店で出すレベルじゃねぇのか…。いっそのこと、小料理屋でもやればいいのに…)
「そうか。ローはアンちゃんが好きなんだなぁ!」
口の周りに米粒をつけながらコラソンはニコニコと満面の笑みを浮かべた。