第4章 見返りは弁当を
(また始まった…)
ナミとゾロは呆れ顔だ。
元々アンとルフィは休日はずっと一緒に行動するぐらい仲が良い。
ただ、ルフィの進路のこととなると大喧嘩が始まる。
大学に行かせたい堅実な姉と行きたくない奔放な弟。
「おれ、頭悪いし、大学なんて行けねぇよ!」
「だったら、空手とゲームばっかりやってないでちゃんと勉強したらいいじゃない!お願いだから、大学か専門学校には行ってよ!」
「姉ちゃんが高卒のくせに何言ってんだよ!」
だからこそなのに。
母を亡くしたのは高3の夏だった。高卒で何の資格もなくて、おまけにまだ小さかったルフィがいて、職探しには本当に苦労した。
そんな苦労、弟にはかけさせたくない。
「おれは高校卒業したら、武者修行に出るんだ!レイリーみたいなスゲェ空手家になる!!」
「そんなんで、どうやってご飯食べていくの!?
大体スゲェ空手家なんて、私に一回でも空手で勝ってから言いなさいよ!私に勝てないとエースもサボも超えられないんだからね!!」
「うっ…!!」
アンの言う通り、四人とも幼い頃から空手を習っているが年長者の三人にルフィは勝てたためしがない。
第一線はとっくに退いて、たまに運動がてらレイリーの道場に通うアンにさえ。
「もー、おれ風呂入って寝る!」
「ちょっとルフィ!
…はぁ………」
二人とも頑固だから、お互い一歩も譲らない。
ルフィの夢を応援したい気持ちがあっても、なるべく波風が少ない道を進んでもらいたいのが姉心なのに結局いつも物別れに終わるのだ。
ため息を吐いてふとスマホの画面を見るとメッセージがきている。
『よぉ、久しぶり。
実は話したいことがあるんだ。
今度、時間作れるか?』
従兄弟のサボからだった。