第4章 見返りは弁当を
今日の弁当は期待していた通りのもので、ローはご満悦だった。
弁当を受け取るとき、どこかうわな空な彼女の様子が少し気になった。心ここにあらずで元気がない。
相変わらず自分に向ける笑顔は営業用で少しイラッとした。
それでもアンが作った弁当を食べると気持ちがほんわかして、ストレスが溶けるような感覚がする。
野菜を使ったおかずがいくつか入っていて、栄養バランスが取れているのもありがたい。
どうしても男の一人暮らしだと偏るから。
今日はちゃんとローのリクエスト通り、卵焼きが入っていた。
素朴なのに品がある。
美味い。
おにぎりの具も今日はシャケだった。
美味い。
(……贅沢だな、あの弟共。朝から晩まであの女が作ったもん食ってんのか…)
ラーメン屋で会った三人の高校生の顔が浮かんだ。
血のつながりがあるのはルフィという少年だけで、あとの二人はただの居候だとレイジュから聞いた。
事情はわからないが両親はいないらしい。弟一人を養うだけでも大変だろうに。
アンのことはほとんど何も知らなかった。
弟がいて、レイジュの同級生というから自分とも同い年ということぐらいだ。
(…彼氏とかいるのか?そりゃ美人だしいるよな…。でも女っぽい格好してねぇんだよな、全然。仕事だからか?)
何故だろう。
彼女のことをもっとよく知りたいと思ってしまったのは。