第4章 見返りは弁当を
仕事が終わり職員通用口を出て駐車場に向かおうとしたローは、外からコンビニの方を見て思案した。
卵焼きはないし、梅干し入りのおにぎりに当たって散々だったが、他のおかずはどれもローの口に合うものだった。
自分の好き嫌いの話をしたことはないし、多分梅干しの件はたまたまなんだろう。
明日の何の弁当だろうかとわくわくする自分と、明日も彼女は作ってきてくれるのだろうかと不安に思う自分がいる。
悶々としながら、結局コンビニには寄れなかった。
話がしたくても仕事の邪魔になるだけだろうし、友人ですらない。むしろ警戒されている。連絡先も知らない(レイジュに聞いたら断固拒否されて教えてもらえない)。
誰かに相談したくても、生憎コラソンは用事があって早めに帰った。
気が晴れないまま、人気がない駐車場に向かう。
すると見慣れた大型バイクの横に、悩みの元凶の女がしゃがみこんでいた。
「あー、もう!どうしようかなぁ…」
アンは愛車を前に困っていた。
祖父から譲り受けたバイクのエンジンがかからないからである。
寿命と言われても不思議でないぐらいは部品を取っ替え引っ替えして乗っている。
やっぱり足がないと困るし、愛着もある。新しいものを買う余裕だってあるはずない。
「動いてくれないと困るのよ、ねぇ……」
「誰に話しかけてる?」
背後から急に声をかけられて、心臓が口から飛び出るかと思った。
「……びっくりしたぁ…」
背後にいたのは、イケメンハイスペック医師。
「このハーレー、お前のだったのか?」
「あ、はい。おじいちゃんからもらったんですけど、調子悪くって。修理に出さなきゃ」
アンは愛おしそうに、バイクを撫でた。