第4章 見返りは弁当を
(…やっと終わった)
やっとの思いですべての患者をさばいたときには、14時前だった。
今さらあの女は弁当ちゃんと作ってきたのか不安になる。
明らかに不審がっていたし、無理もないと思う。
「いらっしゃいませー!あ…」
(来た…)
コンビニで絶賛仕事中の彼女はローの姿を見ると、営業スマイルを引きつらせた。
ミネラルウォーターとコーヒーを持って、彼女のところに行く。
普段通りアンはレジで商品を袋に入れて、ローに手渡す。
「…ありがとうございました」
「…オイ。弁当取りに来たんだよ」
「やっぱり?」
アンは首を傾けて苦笑した。
裏に行き、すぐに戻ってきた彼女は弁当の包みをローに差し出す。
ああ、やっと、手に入れた。
この時間の医局は人が少ない。
さっきからPHSが何度も鳴って、カンファに行かないと言うとレイジュにどやされたので、後から行くと言って通話を切った。
わくわくする気持ちを抑えながら、弁当を開ける。
それなのに。
あんなに楽しみにしていた卵焼きはーー、その中にはなかった。