第4章 見返りは弁当を
"本日のトラファルガー先生の外来は2時間待ちです。"
そんな張り紙が外来の窓口には掲示されていた。ちなみに毎回である。
それなのに、今日の彼はいつもと違った。
「キャプテン、今日は何でそわそわしてるの?」
「そわそわなんてしてない」
「えー、そうかなぁ。何回も時計ばっかり見てるじゃん」
「うるせぇ。それよりこの画像を早く取り込め」
今日に限って紹介患者が多く、外来はなかなか終わらない。もう13時なのに。
(弁当、取りに行けねぇ…)
「ベポ、あと何人だ?」
「紹介が五人で、再診が三人だよ」
(マジかよ…)
「紹介は他の奴に回せ」
「全員紹介状、キャプテン宛てなのに無理だよ」
ローではないとオペできないような患者が紹介されてやってくるのだ。他の医師では診れないし、検査の結果でオペの日程も決めないといけないから時間がかかる。
それに14時からは術前カンファレンスではなかったか。
(カンファはサボってもいいだろ。執刀医じゃねぇし。後は……)
「もうお前代わりに診とけ」
「そんなの無理だよー!ぼくただのクラークなのに」
「トラファルガー先生、次の患者さんいいですか?」
無常にも看護師によって次の患者が呼び込まれる。
(ゆっくり弁当ぐらい食わしてくれよ…!)
同時刻、コンビニにはレイジュが弁当を取りに来ていた。
「こっちを本業にした方がいいんじゃないの?」
「そんなことないよ」
苦笑するアンから弁当を受け取った。今日も美味しそう。
「…あのさトラファルガーさん、まだ取りに来てないんだけど」
「ああ、まだ外来終わらないんでしょ。そこの店長にもあげちゃいなさいよ」
レジのそばの丸椅子に腰掛けたクザンは大穴がどうこう言いながら、相変わらず競馬新聞を見ている。仕事しろ。
(そのうち取りに来るよね…)