第4章 見返りは弁当を
月曜日の朝。
(…見返りがお弁当ねぇ……。医者ってみんな、家庭の味に飢えてんのかな)
五人分の弁当が六人分になったところで、何の苦もない。
そんなに金銭的にも変わらないし。
彼の提案は謎すぎた。弟たちのラーメン代、負担するから弁当作れって?
イケメンだけど悪人顔でこわいし。
レイジュだってため息を吐くだけで何も教えてくれない。
梅干しとしらすを和えたのを中に入れてふんわりおにぎりを握る。
(何でも食べれるのかな?好き嫌いとか聞いてないけど。ま、いいか)
使い捨ての容器にレイジュとの二人共の分を詰める。
今日のおかずはコロッケとみつばの和え物、きんぴらごぼう。
ちょうど朝の卵かけご飯で卵を切らしてしまい、今日は卵焼きはなしだ。
(いつも入れてるし、今日はいいよね)
そもそも毎日卵焼きを作るのは、アンの母がそうだったからだ。
(……あの人、お母さんが作る甘い卵焼きが大好きだったからな…)
「姉ちゃん、水筒と弁当!もう出るぞー」
「あ、いってらっしゃい。
ナミちゃん、帰りに駅前のスーパーで卵買ってきてくれる?特売の日だから」
「はーい」
「じゃあな、姉ちゃん。いってきまーす!」
(ぼーっとしてちゃ、ダメダメ)
高校生の三人を見送ると、アンも仕事に行く準備をした。
心の奥の方で騒つく気持ちを抱えながら。