第3章 エリート医師の恋愛事情
ほのかに甘くて繊細な味の卵焼き。一度食べただけで味を覚えてしまった。
レイジュは誰が作ったのか教えてくれなかった。
一人暮らしの彼女だから多分弁当屋で買ったんだろうか。きっと他の料理も美味いんだろう。
「キャプテン!聞いてます!?キャプテンの好きなタイプってどんな子ですか?」
全然聞いてなかった。何だ好きなタイプって。
「あー…、そうだな。料理が美味い女」
「…それって、付き合ってからじゃないとわからなくないですか?」
「まあ、そうだが。美味いに越したことねぇだろ」
「よし!それならおれがローのために一肌脱いでやる!
って、わあぁ!!」
言わんこっちゃない。ロシナンテはテーブルに手を置き乗り出した瞬間、目の前のグラスや皿をひっくり返した。
「コラさん先生、大丈夫っすか?すいません、何か拭くものをくださーい!」
「ごめんよ、皆…。おっとっと…」
立ち上がろうとした途端、床にこぼれた飲み物で転びそうになるコラソンの腕を捕まえる。
いつものことだがドジ過ぎる。
「いいから、あんたもうじっとしてろ……」
「ごめんよー」とコラソンは目をうるうるさせている。
いい歳こいた大人だが、この人だから憎めない。
(だが嫌な予感しかしねぇな……)
しかもその予感は的中する。