第3章 エリート医師の恋愛事情
トラファルガー先生は料理上手な子がタイプらしいーー。
病院内ではそんな噂がすぐに広まった。
その結果、今ローの机の上は弁当で埋め尽くされている。
「コラさん、責任取ってくれよ……!」
「ごめん!ごめん!」
鬼の形相で睨まれたロシナンテは平謝りするしかなかった。
例の噂の発端は彼である。
噂を聞いた病院内の女子達は思った。
お弁当を作って、料理の味が彼に認められたら彼女になれるかもしれない。
噂が広まるやいなや、ローの元には毎日10個以上の弁当が届く。
メッセージカードが入っているが、誰がどの弁当を作ったかなんて正直わからない。
ベポに毎日持って行って消費してもらうのだ。
今病院では料理教室に通う女子が爆発的に増えているのだという(シャチ調べ)。
「大変そうねー」
弁当をもぐもぐしながら、レイジュは感情のこもってない声でそう言った。
彼女は今日も美味しそうな和食弁当を食べている。
おにぎりに生姜焼き、いんげんのごま和え、そして卵焼き。
「……交換してくれよ」
「嫌に決まってるじゃない」
レイジュは卵焼きを美味しそうにほうばる。
うらやましい。
もらった弁当にも卵焼きが入っていたので一応食べてみたが、なかなかレイジュの弁当を超えるものには出会えない。
「その弁当毎日どこで買ってんだよ」
「お・し・え・な・い」
頑ななレイジュの態度には嘆息するしかない。
「たがか、弁当だろうが…」
「だって、あんた料理上手な子がタイプなんでしょ?絶対に嫌!あんたと付き合ってもロクな目に遭わないんだから」