第13章 彼の妹
「マジか………」
ローは頭を抱えて、深いため息を吐いた。何がどうしてこうなった。
「お兄ちゃん、さっきのイケメン知り合い?ちょータイプなんだけど!連絡先教えてよ」
元凶であるラミは悪びれもせず、我が道を行く。それがただただ、腹立たしかった。
「やめろよ!」
ラミの手を払いのける。本当なら今すぐに追いかけて、誤解を解きたい気持ちでいっぱいなのに。一方で、すべてを拒絶したような目をしたアンを容易に説得できないこともわかっていた。
それでも諦められないんだ。アンを。
「どうしたの?もしかして、さっきの人、お兄ちゃんの好きな人だったりして。そんなわけないよねー」
へらへらラミは笑う。コイツはおれを苛立たせる天才なのか。
「そうだよ。おれはもう帰る!買い物ぐらい一人でできるだろ」
「ちょっと!フレンチはどうするのよ」
「友達とでも行けよ」
どうせラミにとってはおれは金ずるだ。クレカだけ渡してローは帰宅した。
࿐༅ ࿐༅ ࿐༅
(お兄ちゃんのバカ!バカ!バカ!!あんなに怒らなくてもいいじゃん)
買い物を終えたラミは夕暮れの歩道を歩いていた。
せっかく人気のフレンチのお店の予約が取れたのに。友達だって急に誘っても誰も来てくれないし、そもそも学生にしては不相応のハイブランドで身を固めたラミは友達が少ない。寄ってくるのはお金目当てのクズ男ばかり。
「あー、疲れた」
わかっている。自分が甘えていることぐらい。
バイトしながら学業に励んでいる子だって大勢いる。だけど今さらどうやって年相応になれと言うの?
親や兄に頼っていればお金には不自由しないのに働くのだって馬鹿馬鹿しい。大学卒業したら専業主婦させてくれる王子様どこかにいないかな。お兄ちゃんにお医者さん紹介してもらったら、万事解決じゃない。
「それまでは遊んでいよっと」
人生イージーモードのラミはまたウキウキと歩き出す。
背後から近づく悪意には全く気づいてなかった。