第13章 彼の妹
「あれ?お兄ちゃん?」
買い物に夢中だったラミは、近くにローがいなくなっていることに気づいた時、兄は靴屋の前でジャージ姿の赤髪の女の人と話していた。
(もー、お兄ちゃんてば!誰よ、そのダサい女。ナンパ??)
最近口うるさいけど、なんやかんやローはラミに甘い。欲しい物は買ってくれるし、かっこいいし、医者だし、申し分ない自慢の兄。お兄ちゃんが彼氏だったらよかったのに。
(このダサジャージ女!ラミのお兄ちゃんをナンパするなんて許さない!!今ラミが助けてあげるからね)
勘違いしたラミはローに駆け寄る。近くで見るとダサジャージ女はそこそこ美人だった。だけど、私が認めた人じゃないと兄の隣に立つなんて許さない。
「ねぇ、誰?この人」
ローの腕に手をやりながら、上目遣いで問いかける。ローは一瞬で顔を引き攣らせた。失礼ね。
「ああ、この人は職場が一緒で…」
「へぇー。こんにちは!彼女のラミです!!」
「え、彼女……?」
アンはきょとんと驚いた顔をした。と、同時にローの怒鳴り声。
「ラミ!?てめぇ、何言って…!?」
慌てふためく兄。どうして?助けてあげたのに?
「彼女、いたんだ……」
「違っ!こいつは妹で!」
え?何これ?修羅場の予感?
「トラファルガーさん、そんな嘘つかなくていいのに」
アンはこちらがゾッとする笑みを浮かべた。目が全然笑ってない。怖い。
「ねーちゃん!見てみ!かっちょいいだろ〜」
「お待たせ〜。おっ!トラ男くんじゃん。久しぶり」
ひょこっと会計を済ませたルフィとエースが現れた。
何このそばかすの人、ワイルド系イケメン!超タイプ!!
「トラファルガーさん、彼女とデート中だって。邪魔したらいけないから帰ろ」
「え?トラ男くん、彼女いたの?」
誠実そうだったのに、とイケメンは呟いた。ていうか、彼女設定にしちゃったら連絡先聞けないじゃん。ラミのバカ。
「ちょっと待ってくれ!話を…」
「じゃあ、さようなら」
アンは今までローに向けたことがない、冷たい目をして去っていった。