第13章 彼の妹
新しいショッピングモールは休日ということもあり賑わっていた。靴屋はすぐに見つかって、ルフィはエースとああだこうだと試着しながらスニーカーを吟味している。
「あんまり高くないのにしてよ。すぐダメにするんだから」
「おれ、買ってやるよ。いつもメシごちそうになるお礼」
「いいの?助かるけど」
「色違い買って、サボに自慢してやるんだよ」
エースは笑むとルフィを連れてレジへ向かった。その間、近くの姿見に自身の姿を写したアンはその冴えない姿に顔を曇らせる。すっぴんでジャージ。願わくば誰にも会いたくない。
会いたくなかったのに。
࿐༅ ࿐༅ ࿐༅
ローはラミに連れられて、新しくできたショッピングモールに来ていた。服やら化粧品やらあれこれ買い漁る妹に呆れつつ、ふと靴屋の見覚えがある後ろ姿に気がついた。
(…こんな可愛い靴なんて履いたことないわね)
会計を待つ間、並んだ靴を見ながらアンは自嘲気味に笑う。ヒールのある靴なんて冠婚葬祭用の一足だけ。そういえば大したおしゃれもせずにもう20代後半だ。
「…よぉ」
背後からいきなり声をかけられ振り向く。もやもやした気持ちの元凶がそこにいて、口から心臓が飛び出るかと思った。
「こ、こんにちは…」
「買い物か?」
「ええ、ルフィとエースと」
なんで会いたくない時に限って会ってしまうのだろう。
夏休みの告白後、ローとは相変わらずの激務だったし、弁当を渡すのもレイジュに頼んでしまっていたから、あの後まともに会話した覚えがない。
気まずい。